第23回中原中也生誕祭のこと

どうも。礒多を読む会・代表の中西です(言ってみたかった)。
今回は詩のこと、というか4月29日の中原中也生誕祭に行ったときのことです。

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中原中也記念館の向かいにある「狐の足あと」にて食べたケーキセット。


前日に「礒多を読む会」があったので、そのまま湯田温泉に泊まることに。
「空の下の朗読会」に参加する予定なのにもかかわらず、詩ができていない。
山口県立図書館で過去の中也賞受賞作を幾つか借りて、読みふける。
何か降りてこないかなぁ。
しかし、詩集はあれね、装幀とかにトレーシングペーパーを使ってる率高いね。
川上未映子『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』
文月悠光『適切な世界の適切ならざる私』
もう一冊何か読んだはずなのに思い出せない。
多分、暁方ミセイ『ウイルスちゃん』だったかな。途中まで読んで買おうと思った記憶がある。
とにかくなにも降りては来ず。眠ることに。

 

4月29日、朝7時に起きて温泉につかったり宿の朝食を摂ったりしているうちにふと閃く。
とりあえず詩はできた。何回か声に出して読む。よし。
さぁ行こうかと思ったら「読む会」の栗田さんから電話がかかってきて
「中西さん朗読会の先着20名にもうなりそうなので私かわりに並んでます」

ええっ?!!
慌てて中原中也記念館へ。

行く途中に赤い着物姿の女性が信号を待っていて、
ああそうか、連休だし結婚式とかもあるんじゃろうなぁ、と思っていたら後でその人が今回の中原中也賞を受賞したマーサ・ナカムラだったと知る。

 

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当日の様子。木に花を添える人たちが昨年より多く感じた。

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「空の下の朗読会」は先着20名のところに17名くらいはすぐにうまって、栗田さんは11番目をキープしてくれていた。結論からいうとそんなに慌てなくても良かったけれど感謝です。
朗読会はまず地元の小学校の生徒がやって、その後に中也賞を受賞した方の朗読や、福島の朗読グループの発表が終わってから自由参加の朗読が始まる。

今回から読む時間がきちんとルール化されていてありがたかった。
昨年、初参加のときは1人3分なんてルールはあるだけみたいな感じで押しまくって後半にエントリーした私は本当に読めるのかヒヤヒヤして待っていた。厳密に1人3分以内になり、読むのに何分かかるかも申告するので、中也の詩を一つ読むだけなら1分という人もいて、最終的には30人くらいは朗読したんじゃないだろうか? スムーズな進行に感謝です。
ただ、最初に小学生の朗読があるからハードルめっちゃあがるんですよね。

彼らはよく練習してきてるし、中也の詩とか背伸びして読んだらもうギャップ萌え100%で満点じゃないですか(異論はなかろう)。
なので、自由参加の人の朗読聞くと読む練習してるか、してないかとか、練習してきたけど今日は緊張して本調子じゃないとか、よくわかってしまう。

だからまあ、当日にできたてホヤホヤの詩なんて論外だったかもしれない。
私の詩は果たして誰かに届いたであろうか?
ちなみに私の詩は後に、山陽小野田市立中央図書館の「ポエムカフェ」で読んでめでたく5月の詩に選ばれた。

タイトルは「湯治」。

http://library.city.sanyo-onoda.lg.jp/poem-cafe/docs/2018.05詩.pdf

 

びっくりしたのは、『きょりかん』で今回の中也賞の候補になった海老名絢が朗読会に参加したことですね。

えっ、来てんの? みたいな。ツイッターのクラゲのアイコンだけ記憶にあった。
受賞できなかったのにわざわざ山口県まで来て詩を朗読するという爪痕残す感じがかっこよかった。

 

きょりかん

きょりかん

 

 

毎年「空の下の朗読会」に参加している中柴さんと流れで飲みに行くことになる。違うイベントで何度か会ったことがあって知り合いだった。もう10年くらい毎年参加してるとのこと。

演奏会の最中にようやく受賞作の『狸の匣』を読む。

残念なことに私と「狸」の相性があまりよくなかった。
田舎に住む私にとって、狸はとても身近な農道で轢かれている害獣でしかなく、ファンタジックにとらえられなかった。まあ、そういうこともある。最後の「トキョ」っていう詩は好きだった。

狸の匣

狸の匣

 

 

湯田温泉ユウベルホテル松政での贈呈式・記念講演に参加する。

 

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佐々木幹郎の選評が面白かった。今回は5分くらいですぐ決まったとのこと。
その後で、じっくりそれぞれの作品を掘り下げたという異例の選評会だったらしい。
海老名絢の名前をあげて「あなたのも良かったよ」と言っていた。
マーサ・ナカムラが中原中也記念館に展示してあった彼女の市松人形と同じ姿をしているってのが笑った。確かに同じだ!

 

記念講演は太田治子。「中原中也の愛」というテーマだった。
最初、声が出てなくて大丈夫かと思ったが、ずっとそのままだった。
しかし、中也の詩を読むときだけは声優みたいにぐっと声が若返る。
前日にマーサ・ナカムラとたまたま出会って、一緒に中也のお墓に行ったらしい。
朗読した『春日狂想』を「かすがきょうそう」と言ったので、中柴さんが怒っていた。
「しゅんじつ、じゃろう!」
なだめつつ飲みに行く。

宿で夕食を予約していたので、私は飲むだけにした。
詩のこと、仕事のこと、不寛容な時代だということ、最近のニュースについて、とか色々話した。

嬉しかったのは、まだ影も形もない私の次の詩集を予約してくれたことだ。
「あんたぁ、今日も自作の詩、読んじょったけど、本にはせんのかね?」
「いや、まあ、いつかは本にするつもりですけど」
「幾らくらいの予定?」
「1000円から1500円くらいですかねぇ」
「よし、買った!」

が、がんばります。

久しぶりのお酒にフラフラになりつつ。ちゃっかり温泉には入る。
翌朝も入る。中原中也記念館で今回の候補作を読む。
これ、全部集めたら1万円こえるからありがたい。
手に取ってみて読んでみて初めて購入へと至るのが普通だが、本屋にはないもんなぁ。
私家版はとくに。
やっぱり男性が書いた詩集のほうが圧倒的に読みやすい。
しかし、この超個性的な詩集を並べて評価することの難しさよ。
とりあえず『きょりかん』をポチッた。

今回の誕生祭は内容が濃かった。
嘉村礒多の顕彰も中也に負けないように地味に長くやっていきたい。
という意気込みだけはあるのだ。うん。

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近くの井上公園にある池はとてもフォトジェニック。


次回は国木田独歩記念講演に行ったときのお話です。