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ドヤ顔で自慢しよう『LET IT GREET』

『LET IT GREET』
 日谷氏の大学時代後半とその後の埼玉生活から紡ぎ出された作品群。

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 ちなみに改訂前と改訂後では納められている作品が違う。シングルを3種類リリースしてカップリングが異なります的なあくどい商法をしようというのではない。
 問題は改訂版には収録されていない作品を評価したい私の気持ちである。
 
青い月、黒猫、赤い髪


ーー近所の高校のグラウンドに忍び込んで、満月の、真っ青な御月見に洒落込むことになったーー

 夜の高校に忍び込む男女を青い月明かりがただ照らす。風景の描写が細かくて、美しさをみせながらも、主人公はどこか冷めている。冷めた視線と彼の赤い髪は全く重なっていない。むしろ、青い月の光に近い。
 黒猫の鳴き声がリアル。

『Come As You Are』
 主人公の修一は八畳ほどのアパートに兄と姉と三人で暮らしている。彼の居場所はそのロフト。狭っ苦しいことの居心地の良さは、修一が置かれている立場のメタファーである。
 この状況に至るまでの過程が詳細に描かれていないあたりを許せるかどうかで、好みは分かれるだろう。
 ぜひ、狭い場所でひっそりと隠れるように読んでほしい。


紫陽花


ーー葬式から一ヶ月も経てば私は時々、母親が死んでいることを忘れたーー

 大学生の妹は急に下宿を尋ねてきた兄と箱根に行く。兄は小雨降る箱根の景色を撮影する。妹は母の死を受け入れつつある。
 箱根に行ったこともないのに行った気にさせるやさしい短編。
 箱根駅伝に選手として参加して読んでほしい(冗談だよ)。
 
『徒歩三分』
 珍しく私小説的に描かれた作品。一瞬ブログの文章かなと思った。きちんと小説である。
 日常の「詰まらなさ」にスポットが当てられる。 埼玉県川口市という場所を舞台に、著者が何を描きたいのかが、なんとなく理解できる掌編。

 

『四万キロメートルで挨拶を』
 大学文学部の卒論あるあるが詰め込まれているので、文学部で卒論を書いた人は共感できるかもしれない。
 私は、主人公・大学生の新條が食べるキウイフルーツのくだりが好きだった。田舎では大量にキウイフルーツが採れたりするのだ。ニュージーランドで鳥の方のキウイも見たことがある。
 部分的におもしろいところはあるが、全体通して見ると、個人的には消化不良な感じが否めない。誰か読んで解説してくれないか?
 

(おまけ)『墓を掘る、死体を焼く』  
 改訂前に納められていた一作。フラグメンツ収録《箱》の元となった作品らしいが、こっちの方が面白かった。
 墓を掘る人。焼く人。そしてもう一つの視点が加わったことで、ぐわっと広がっている。何処かのサイトで読めるようにしといたら(してたらすいません)ラウシズム入門にもってこいである。

 

 私が読んだラウシズム作品について、後半はめっちゃ駆け足ではあるが振り返ってみた。

 ぜひ第24回文学フリマ東京で

【A-18】

に来たら、全ての本をゲット。ついでに無料配布の

『Wanna be?』

までを5月中に読了し感想を著者にメール、もしくはブログまたはSNSに書いて(否定的な意見でもいいと思う)、ラウシズム日谷はわしが育てたとドヤ顔で自慢して頂きたい。

 今ならまだ間に合う。